好きな人は芸能人*ラブソングは始まりの合図*

あぁ、ごめんなさい、大事な大事なポスターがきっとグシャグシャになっちゃう。
ホントにすみませんーっと心の中で謝罪を繰り返すもなかなか襲って来ない衝撃に恐る恐る目を開けた。

そこにはサングラス姿の長身の男性の姿。
こともあろうか私はその人に抱きとめられていて…
「きゃぁぁあっ、すみません、すみませんっ、あ、っと、助けて頂いてありがとうございますっ。け、怪我はないですか!?」
「くくくくっ…」
「へ?」
「パニくり過ぎ。それに怪我はない?はこっちのセリフ。怪我はない?」
「はいっ、この通りです。脚立から落ちるところを助けて頂いて本当にありがとうございます。」
「もー、Saku!急に走り出したかと思えば何してんだよ。」
「あ、圭。人助け、脚立から落ちるトコ見えたから。」
「え??」
「もしかして、気づかなかった?俺、キミが頑張ってフロア中に貼りまくってくれてるポスターの人。」
「すみませんっ、そんな、おおそれた方に助けて頂きましてっ!!本当にすみませんっ!!」
とにかく謝りまくる私に、助けてくれたSakuさんは声を殺して笑うばかり。
本当に私は何をやっているのだろう、脚立かた落ちそうになってこんな偉大な人に助けてもらってまともにお礼も言えないなんて…。

「あ。その手、どうしたの?」
「手?あ、紙で切ってしまっただけですから気にしないでください。」
見れば血が滲んだ切り傷がいくつもあった。
手を見ればあまりのみすぼらしさにとっさに手を後ろに隠した。