画鋲を脚立、ポスターを入れたカートに加えて両手にも余るポスターの山を抱えて私は一人フロアの掲示板周りを再開。

ポスターが丸まっていることもあって貼るのも一苦労。
脚立に上りながらってのも難しい。
ただ、だだっ広いフロアに掲示板がいくつあるのかも定かではなく道のりは長いことは確実だった。

ポスターを広げるときに手を切ってしまって、あちこち切り傷がヒリヒリ痛い。
「あ…これ新曲の広告なんだ。この前、歌ってた中にあったのかなぁ。やっぱり、安奈の言うとおりCD漁ることになりそうかも。」
ボソっと独り言を呟いた。
コンサートが終わってから日が経つにつれてハマってしまっている自分が居たのには自分でも驚いてしまった。

「今日、ネット予約しよう。」
そう一人で決意表明して座り込んでいた脚立に立って掲示板に手を伸ばした時だった。
グラりと視界が揺れた。

もともと、けして新しくない脚立、無理な体重移動がバランスを崩す引き金になったのだろう。
私は、衝撃に備えてギュっと目をつぶった。