「「お疲れ~」」

大好きなモスコミュールが渇いた喉を潤していくのが分かる。
叫んだわけでもなく、何をしたわけでもないのにとっても喉が渇いていたのにはビックリした。

「安奈、」
「ん~?」
「コンサート、ありがと。すごく楽しかった。」
「そう?そう言ってくれると誘った甲斐があったよぉ。どう?また来たい?」
「うん。Sakuさんのなら。」
「あ、予想外の答え。久美って容姿端麗に弱かったっけ?」
「ううん、そりゃぁ綺麗な人が嫌いなわけじゃないけど、曲が好きになったの。外見はオプションかな(笑)」
「ハマり症の久美のことだ、明日からCD漁りだね。」
「まさか、そこまではしないよ~。」

コンサートの感想から次第に話の内容は安奈の愚痴になっていった。
「彼氏がさぁ、超いい加減であったま来たから昨日フッてきたんだよね~。」
「安奈、もう少し内面を見て付き合いなよ。」
「彼氏いない歴=年齢の久美に言われたくない。」
「それは、ごもっともだけど…。好きな人ができないだけだから私は!!」
「あ~、どっかに良い人いないかなぁ。」
「安奈なら、すぐ出来るでしょ~。モテるんだから。」
「そっくり、そのまま久美に返すわよ。」
「え~。」

至って普通のガールズトークに花を咲かせて店を出ると、込み合っていた駅は静寂を取り戻していた。
それと同時に終電もなくなっていて、タクシー帰り。
貴重な、月末の生活費が…と思いつつ楽しかった時間と比べたら苦になるはずもなかった。