数時間に及ぶコンサートもあっと言う間に感じられ、最後のエンディングが流れ会場を埋め尽くしていた何万という人が小さな駅になだれ込んだ。

「ね、これじゃぁ、電車もすし詰め状態だし、ご飯ついでに飲んで帰らない?」
「そうだね。お腹も空いたし。」
「でも、久美、仕事って言ってなかった?大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、なんたって2時に帰って普通に出勤したこともあるし。」
「まったく、何してんだか。」
「だって、会社の付き合いだから仕方なくね。安奈は真面目だからないかもだけど。」

「ないねぇ。どんなに付き合いだって言っても途中で帰るし。」
「いいなぁ。私も途中で帰るって言える度胸が欲しいよ~。」

喋りながら、チェーン店の居酒屋に入った。
その店はコンサートの余韻を楽しむためか、Sakuの曲が流れていた。
どうやら、コンサートがある日はその出演者の曲を流しているらしかった。

席に着いて座ると、どっと足が重くなるのを感じた。
それも、そのはず、途中で疲れたかも・・・と思っても私は一度も座らなかったのだから。
いや、座れなかったというのが正しいかもしれない。