名前はイニシャル。
これじゃぁ、特定のしようがないとでも思ったのか。
ますます面白い。

それにしても気に入っていた指輪が戻ってきて良かった。
少しでも早く返せるようにとご丁寧に速達で届けてくれる心遣いがとても嬉しかった。

「Saku、やけに機嫌がいいようだけど?」
「あながち間違いじゃないね。」
「何か良いことでもあった?」
「そうだな、圭に頼みがあるんだけど・・・」

今週の自分のスケジュールくらい把握している俺は圭に手配を進めてもらうことにした。
そぅ、この指輪の届け主の確保をね。
「今週はスケジュールに空きがないことは分かってる、週明けに頼む。」
「まぁ、そんなの安奈に頼めば簡単だけど。珍しい。」
「なにが?」
「Sakuが一人の女に興味を持つのがね。」
「そんなことないだろ。これまでもあった。」
「派手な女ばかりだろ。あの子は違う。安奈も言うだろうけど、中途半端に関るなよ。」
「どういう意味?」
「あの子はこれまでの遊んでる女とは違う。純粋そのものだって意味さ。」
「何言ってんだ、恋愛対象じゃない。ただのお礼をするだけだよ。」
「それならいいけどね。」

圭は意味深な笑みを残して、打ち合わせがあるからと事務所を出て行った。