多分、あの時だろう。
結構、大事にしていたのにな…そんなことを思いながら頭を掻いた。

昨夜、家に帰って来てから気づいた。
いつも付けている指輪がないことに。
違うのを見繕えば良いと思われるだろうが、気に入ったものしか身に付けない主義。
近々、いつもの店に行って来よう。
そう、思っているとき圭が小ぶりのダンボールを抱えて部屋にやってきた。

「サク、荷物。」
「誕生日はとっくに過ぎたんだけど。」
「昨日、打ち合わせに行ったクロスブレーンからだよ。」
「何だろう。」
ダンボールを受け取って開けてみる。
そこには慎重に梱包されたように鎮座するリングケースと丁寧な字でSaku様へと書かれた手紙が入っていた。