「Sakuさんにマネージャーさん、こちらにいらっしゃいましたか。」
聞きなれた声がパタパタという足音と共に近づいてきた。
安奈の会議はSakuさんのPRの会議だったのだと気づいた。

「すみません、今、行きます。」
「どうかされましたか?」
「いえ、ちょっと彼女を助けただけです。」
「久美っ、じゃなかった、岡野さんっ、どうかしたの?」
「いえ、脚立から落ちそうになったのを助けていただきました。会議のお時間を遅らせてしまったこと大変申し訳ありません。」
社内では、主任とヒラの関係。
深々と安奈に頭を下げると、ガシっと肩をつかまれて大丈夫なのかと何回も安奈に聞かれた。
心配性なのにも程があると思うんだよねぇ。
確かに私はボーッとしてる時が多いかもしれないけれど…。

「安奈、その子、違う意味で死んじゃいそうだから、そろそろ離してあげなよ。」
優しい声が私を揺らす安奈を止めてくれた。
それはSakuさんの隣に立つマネージャーさん。
確か、圭さんって呼ばれていたような…。
「あ、やだ、大丈夫!?」
「平気です、主任…。ただ、ちょっと目が回るだけ…」
「全く、安奈は加減がないんだから。」
「うるさいわねっ!!」
「圭、知り合い?」
「あ、言ってなかったっけ?この会社の宣伝部主任、佐伯 安奈。俺の高校の後輩。」
「へぇ。宣伝部ね、よろしくお願いします。」
「もちろん、こちらこそよろしくお願いします。そして、私の親友を助けて頂いて感謝します。それでは会議に行きましょか。」

安奈はSakuさん、圭さんを連れて足早に会議へ戻っていった。
同じく私はポスター貼りに精を出した。