「なんで、お前がココにいる?」
「・・・」
「蘭(らん)に命をうけたか?」
ピリピリとした空気に心は桜の背に隠れてしまった。
「ちょっと、小さな子苛めて楽しいのっ!?」
「そいつはお前を攫いに来たんだ。」
「え・・・」
「ちが、違います、彗(ほうき)さまっ。今日は、ただお姫様に勝手に会いに来ただけです。」
「・・・ならいい。だが、もしそうだったとすれば子供でも手加減しない。」
殺気を残し青年は部屋を出て行った。
桜の傍に座る心は恐怖の色を顔に出していた。

「大丈夫?シンくん。」
「うん。」
「でも、何であんなに怒るのかわかんない。いい大人がっ!!」
「怒るのは当然なんです。違う種族が自分の屋敷に勝手に上がりこんでいるんですから。」
「でも、」
「本当はさっきの時点で殺されてるんです。彗様は優しい方です。だから、誤解しないであげて。」
「シンくんの方が優しいよ。」
力なく桜は微笑みながら心の頭を撫でた。
自分がなぜ、この世界に呼ばれなければならなかったのか、
一体自分は何なのか、不安の波に飲まれてしまいそうで怖かった。
心がそろそろ屋敷に帰らなくてはと帰ってしまうと、部屋の中は静まりかえり、膨らむ不安に桜は自分の体を抱きしめた。