バサリと音を立てる羽根とは対照的に
フワリと寝台に降ろされた桜を覗き込むようにして慧が問う。

「すまない、桜。怖かっただろ。怪我はないか?大丈夫か?」
「ちょっとビックリしただけ。大丈夫。それに、私が勝手に入ったのがいけないんだし…」

至近距離で眉を下げる美し過ぎる顔、桜は昨日の出来事を思い出し顔を赤く染めた。

「どうした?」
「な、なんでもないっ。」
「どっか怪我したのか!?」
「してないから、大丈夫っ。」
「本当か?」
「うん。」
「良かった…桜の髪一本にでも傷がついて欲しくない。」
「大袈裟な…」
耳の下から手を差し込むようにしてして慧が桜の髪を梳き、
一房とって口づけた。

髪に神経が通ったかのように、
桜の胸がドキンと波打った。

そんな空気を取り払うかの様に声が掛けられた。

「慧様、失礼いたします。」
「相模か、どうした?」
「先程の姫様に対するご無礼、六道天狗の頭である私がお詫び申し上げます。」
「で、豊前と比良は、」
「2人はきつく灸を沿えさせています。」


「あ、あのっ!!」
「桜?」
慧の腕の中にいた桜が寝台を下り、頭を下げる相模に掛けより腕に手を沿えた。

「頭を上げて下さい。」
「姫様?」
「元はと言えば私が悪いんです。だから、お灸なんて沿えず、紹介して下さい。」
「しかし…、」
「切られたわけじゃなないですし、刀も慧さんか相模さんが落とすようにしたんでしょ?」
「失礼ながら、私はしておりません。」
「俺もだ。」
「え?」

そこへ、バサリと音を立て部屋に入ってきたのは、
赤い目をもつ、一匹の烏。

「蓮朱!!」
「こいつはっ…」
「姫様、この烏とどこで?」
「今朝、慧さんの部屋で会ったの。喋れないみたいだけど言葉が分かるみたいだし、名前を付けて、慧さんはどこにいるのかなって話したら連れてってくれて。」
「おそらく、刀を落とさせたのは、彼女です。」
「彼、女?」

桜が相模の視線を辿れば、そこには窓の縁に止まり毛繕いをする蓮朱の姿にたどり着いた。