18歳の誕生日前日、桜は神妙な面持ちをした両親に呼ばれた。
「桜、お前に大事な事を話さなくてはならん。」
「なに?」
「天狗様との契約により、お前は天狗様のいる世界へ行かなくてはいけないんだ。」
「・・・は?」
「桜、ごめんね。お母さんがこんなんだから・・・」
「ちょ・・・、話が見えないんだけどっ!!」
「いいかい、驚くなよ?パパとママは実は妖怪なんだ。」
「はい!?」
「お前を身籠ったママとパパは平和な環境で桜を育てたくてこの世界に来たんだ。ママとパパは掟を破ったんだよ。」
「本当はね、ママもパパもその時点で殺されなければならなかったの。けれど、天狗様が18年後、その子供を返せば許すと仰ってくれたの。」
「多分、桜が18になる明日、あちらの世界へ行くことになる。」
「ママ、桜に逢えて幸せだったわ。」
「え、ちょっと、100歩譲ってパパとママが妖怪だってことにするけど、一緒に行くんじゃないの?」
「それは出来ないんだよ。」
「あちらの世界から出た時点でパパもママも妖怪としての力はないんだ。」

力なく笑う父親と涙で頬を濡らす母親を前にして桜は今の話がけして嘘ではないことを
感じた。
楽しみにしていた誕生日、けれど今は18歳になんてならなくていい、明日なんて来なければいい、桜は無常にも夜が明ける空を見てそう思った。