花が咲く頃にいた君と

もうその長い前髪しか見えてなかった。


とにかく結いたくて、結い上げたくて、ゆっくりと東向日に手を伸ばした。



「冬城さん?」

「大丈夫、痛くしない」

「そうゆう問題じゃなくて」



前髪(東向日)が後退り、遠ざかる。


だからあたしも追いかけて、腰を上げる。



「いいから、チョコレート食べなよ」

「いやいや、そんな遠慮しなさんな」

「遠慮じゃないよ」

「問答無用、あたしが決めた、今決めた」



じりじりと近寄ったあたしは、すかさず飛び付いた。


だけどすれすれの所で、空を切る。



その後は、ベッドの回りをひたすら鬼ごっこ。



追いかけて、追いかけられて。


ベッドに乗り上げて、クッションを投げ合って。



ようやく東向日を捕まえた時には、疲れきっていた。


本来の目的も忘れて、ベッドに身体を投げ出した。



もちろん、捕まえた東向日を道連れに。



その後の記憶はない。

きっとそのまま、眠りに引き込まれたんだろう。