花が咲く頃にいた君と

涙は瞳いっぱいに貯まって、目尻から流れた。



忽然と今朝姿を消した十夜


置き去りにされていた部屋の鍵と写真



「じゅう、やに、会いたい」

「それも出来ない。ごめんね」

「な、んで?」


込み上げてくる嗚咽は、いくら我慢してみても、言葉と一緒に吐き出される。



「ごめんね。詳しくは話せないんだ」


ちゃんと話をしようといったのは、東向日のはずなのに。


あたしに話せることは、少ないらしい。



「何で、十夜は、あたしを、売ったの?」

「君のお父さんは、君を売ったんじゃないよ

僕が君のお父さんから、君を拐ったんだ」


目尻を撫でる優しい指に、瞳を細めた。



「僕は君のことがどうしても欲しくて、君のお父さんから、君を拐った」

必死な東向日の声に、揺れる髪に、強い眼差しがちらついた。


涙が止まっていく。



「僕が君を欲した。ごめんね。どうしても君が欲しいんだ」


涙が一筋、目尻を伝って止まった。

そしてはっきりと見える東向日の顔に、カッと熱が込み上げた。



いつもは隠れている瞳が、今ははっきりと見える。