花が咲く頃にいた君と

「読んであげるよ。おいで」


何でこの部屋に来たのか、目的も忘れて。


東向日の隣、ふかふかのベッドに腰を下ろした。


もしかしたら心のどこかで、東向日とちゃんと話を、したくなかったのかもしれない。


少しでも現実から目を逸らして、友達の家に遊びにきた気分でいたかったのかもしれない。



だから、読み聞かせなんて特に興味も無いのに、東向日の隣に腰を下ろして、耳を傾けたのかもしれない。



やっぱりあたしの心は、納得なんてしていなかった。



東向日は英語で書かれた文字を、わざわざ和訳して読んでくれた。




それはねずみの親子のお話。


娘ねずみが、お父さんねずみに、ご飯を作ってあげるってだけの、本当に簡単なお話だった。



「ごめんね、泣かないで」


なのに、あたしは…


そんな簡単な話で、泣いていた。