花が咲く頃にいた君と

東向日の部屋は、元々用意されてたあたしの部屋の隣だった。


壁一面にうず高く積まれた本。


ど真ん中には、キングサイズの、ふかふかなベッドが1つ。



「本が好きなの?」


部屋に入って、第一声はそれだった。



「どうだろう」


笑いを含んだその言葉は、心なしか困ってる様にも聞こえた。



繋いでいた手は自然と離れ、東向日はこちらに振り返った。



あたしは部屋を見渡して、吸い寄せられる様に本棚へ近付いた。


並ぶ本は小説だったり、史料だったり、画集だったり。


ジャンルを問わず、いや言語さえ問わずに所畝ましと並べられている。



一冊手にとってみる。


それは古い洋本で、多分どこかの国の絵本だろう。

色褪せたねずみの挿絵がとても可愛かった。



チラリと東向日に視線を向けてみる。


その瞬間、東向日と目がバッチリ合って、心臓がドクリと跳ね上がる。


ハッとして、反射的に視線を逸らしてしまった。

どうやらずっと見られていたらしい。


ドキドキいい出す胸を押さえて、本を持つ手に力がこもる。




「その本が気になるの?」


東向日はあたしの隣にぴったり立って、腰を屈めた。



「絵が可愛いと思って、読めないけど」


柄にもなく動揺して、声が上擦った。


“読めない”ってことの恥ずかしさから、語尾が小さくなった。



東向日の気配を、必要以上に近くに感じた。