花が咲く頃にいた君と

「立てる?」


東向日あらため、若旦那様は優しい声であたしの腕をやんわりと掴んだ。


あっけにとられながらも、吸い寄せられる様に立ち上がった。



「僕の部屋へ行こう」


綺麗な手に、手を奪われて我に返った。


「ま、待って!あたしは家に帰りたい…」



あの時とは勝手が違う。

あたしは東向日の手を振りほどき、胸元に引き寄せた。



なのに振りほどいた東向日は、少し悲しそうに首を傾げてた。


だからなのか、あたしは強く言えない。



「ごめん。家には帰してあげられないんだ。本当にごめんね」


こっちが申し訳なるくらい、東向日の声には謝罪の意が込もっていた。



「うん、わかった」


あたしは小さく頷いた。


別に納得したわけじゃない。


それ以上食いついていかなかったのは、東向日の気持ちがあまりに真っ直ぐだったから。


諦めるしかないと思うくらいに。