花が咲く頃にいた君と

住宅街を抜けた所で、小さな公園にたどり着いた。


ブランコと滑り台、大きな桜の木。



何でなんだろう。
春になると、桜の木に引き寄せられてしまう。


とても鮮やかなピンク色。


それは出会いと別れの象徴であり、人の心を和ませる。




あたしは吸い寄せられる様に、桜の下に立った。


レンズ越しで見る桜より、やっぱり綺麗だ。


これでまた一つ、あたしの中のアルバムに刻まれる。




けど春は嫌い。


東向日のことを思い出してしまうから。



東向日は、存在自体が春みたいな人だったから。

この季節が来ると、無性に会いたくなってしまう。




「…結女ちゃん?」


控えめな声、遠く優しくあたしの耳に届いた。




疑問も戸惑いもなかった。

ただ反射的に、振り返った先



あたしの瞳が映した人物に時を止められた。




「ただいま、結女ちゃん」



たくさんのピンクが舞った。

さらさらと黒の髪が靡き、ワンピースの裾を揺らす。


少し季節外れた麦わら帽子をその手に

その娘は幸せそうに笑いかけてきた。



「小夜?」



幾千も舞う花びらが、スローモーションで過ぎていく。


小夜だけ、小夜だけがあたしの世界を占領した。