花が咲く頃にいた君と

「さっきは悪かった。なんの説明もなしに、俺の考えを押し付けた。

結女、帰るぞ」


差し出された手を素直に掴めなくて、あたしは俯きスカートを握り締めた。



しばらくそうして動かないと、ため息と共に

さっきまで下宮比さんが座っていたソファに、今度は十夜が座る。



「今回のことだけは、ちゃんと逃げ出さずに聞け」

そんな前置きを一つ、十夜は話し出した。



「本当はな、あそこ立ち退き勧告が出てんだよ」

「へ?」


十夜は懐からタバコを取り出し、火をつけた。


「1ヶ月前くらいかな。結女が居ない時にな。
本当は直ぐに退くべきなんだろうが、結女もあそこ気に入ってるみたいだったからな

勝手に引っ越してたら、結女怒るだろ。だからちゃんと結女と話し合って納得した上で、あそこを出ていきてぇんだよ」


十夜の指に挟まるタバコが、ジリジリと燃えて、ガラステーブルの上に灰が落ちた。



「けどそれも、要因の一つにしかすぎねぇ。もしも結女があそこをどうしても離れたくないなら、それでもいい。

けどあそこから離れたいのは、俺の意思だ。
結女はどうしたい?」