花が咲く頃にいた君と

「確かにあの人の思い出は大切で、ここはそれがいっぱい詰まった場所だ。

けどな、それじゃダメなんだよ!」


十夜は勢いよく立ち上がった。
苦しげに顔を顰め、声を荒げながら。



「けど、そんな状態でここから離れても、何も変わらないよ!」


あたしも思わず声を荒げる。



何で、こうなるの?


いいじゃんこのままで。


何が不満なの?




あたしの中はぐちゃぐちゃだった。


十夜はお母さんの話しをしてくれなかったら、どんな人だったとか全く知らない。



けど、ふとした時

この部屋を愛しそうに見渡す十夜。



きっと記憶の中に居るお母さんの面影を、この部屋で見てるんだと思った。


そんな十夜の優しい眼差しが何よりも、誰よりもあたしは好きだ。



だから、あたしはお母さんは全く知らないけど、この部屋を大切に思ってる。



ここだけが、唯一家族三人が交わる部屋なんだから。



「結女、今がその時なんだよ」