花が咲く頃にいた君と

壁の薄いこのアパート、今のあたしの叫びはアパート中に響いたと思う。


「こんなボロアパートに、いつまでも住んでる訳にもいかねぇだろ」


宥める様に、吐き出された言葉。



「やだ!!!」


けれどあたしは、それをたった二文字の拒否で、一刀両断した。




「何でそんなこと、言い出すの?」

「過去にばっかしがみついてる訳にゃいかねぇだろ」

「十夜はしがみついてるの?」

「あぁ、ここはあの人と暮らした部屋だからな、ついその面影を追っちまう」



…そうだね。


今でこそ十夜とこの部屋で、他愛ない話をするけれど、昔は本当に寝に帰ってくるだけだったね。


時々悲しい目をするのも、何となく解ってた。



解ってたけど、どうにも出来なかった。



「じゃ、もし引っ越したなら、そんな目しない?」