花が咲く頃にいた君と

悲しい様な、悔しい様な

その感情に勝る、嬉しい様な、高ぶる感情。


東向日の手を離れ

ゆっくりと病室の前を過ぎていく。

どの部屋も大部屋で、大きな窓から柔らかい陽射しが射し込んでいた。


そして一番どんつきの病室

開け放たれた扉


あたしは迷うこと無くそこで足を止めた。



ベッドサイドのテーブルに置かれた麦わら帽子

窓の外をジッと見つめる

黒髪の、女の子


彼女はあたしの存在に気付いたようで、さらさらの髪を肩に滑らしながら振り向いた。


黒目がちな二重の瞳が、あたしを捉えて大きく見開かれた。



みるみる女の子の瞳には涙が貯まって

開きかけた口が、今にも叫び出しそうで、女の子は自身の手で口を塞いだ。



「……小、夜…?」


女の子の名前を呼んだのは、あたしではなく

その横に立った東向日だった。