花が咲く頃にいた君と

“奪ってやる”


黒い感情が渦巻いて、その中に小夜の笑顔が消えていった。


どうしようも抑えられない感情、脳裏にちらつく“冬城結女”の存在。



俺は無意識で、初めから彼女をそんな風に、利用したくなかったのかもしれない。



だから、財産なんて―――…

って思ってたのに…



俺は結局、金のために彼女を利用しようとしてる。



「おい、そこのお前」




もう、それは運命だったんだろう。



「人が話かけてんだから止まれよ!」


突然肩を引かれ、グッと後ろに引き寄せられた。

ビックリして直ぐ様振り返ると、そこにはライオンがいた。



「はぁ、何でしょう?」


不機嫌そうに、後ろのライオンは眉を顰めた。



「その目、やべぇよ。お前」


今度は僕が顔を顰める番だった。




何言ってんのこの人?




浮かび上がる疑問は、素直に表情に出ていたらしい。


「危ない好青年を、止める大人なんだわ。オレ」


お洒落なスーツの懐から、タバコを取り出し彼は火を灯した。



「はぁ?」


危ないのは、俺ではなく、貴方なのでは?
色んな意味で…。



「言っとっけど、俺は危ない人間じゃないからな。けど堅気の人間でもないけど」


目の前のライオンと心の中で、会話が成立していることに、俺は驚いた。


「お前、名前は?俺は“冬城十夜”だ」


天に昇る白い煙

一瞬強い風が吹いてかき消された。


あぁ、今日はなんて夜なんだ。