でも次の瞬間にはフッと笑ってて、


「分かりました。では、次のテーブルに御案内します」

何事もなかったかのように振る舞ってくれた。



春樹さんの案内で次のテーブルに行くと、キャストが誰もいないボックス席に、お客さんがポツンと一人で座っていた。


その顔は見るからに不機嫌で、携帯をいじりながら“話しかけるなオーラ”を放出している。


私が対面に座っても、視線すら向けてこない。


気付いてないって事は絶対に有り得ないのに、携帯の画面から視線を離す気配が全く感じられない。


体を触ろうとするお客さんじゃないだけマシだけど――喋る気のない相手とどうやって会話したら良いのか分からず、春樹さんに淡化を切った事を後悔した。