あの騒動から一夜明け、凌さんが朝起こしにくる日常は無くなった。




悠さんが部屋に訪れ、身の回りの世話の担当の者が変わると伝えられた。




悠さんに盾をついたからか、昨日の言葉を有言実行したのかは分からない。





聞いても悠さんは何も答えてはくれず、そしてその日から、スケジュール以外の外出や他人との交流を一切禁じられた軟禁生活が始まった。
















『…あの、電話を貸してくれませんか?婚約者に連絡を取りたいのですが』



「悠様や旦那様に命じられた以外の事は致しかねます。私が叱られてしまいますので」










……新しい担当の女性は、いつも難しい顔をして事務的な事しか話さない。



今まで不自由と感じていた生活ではあったけれど、その中でいかに自由にさせてもらっていたかを初めて知った。



大学はまだ辞めなくて良いようだったけれど、そこでも友人と呼べるような人は居ない。



凌さんは馴れ合うなとは言っていたけど、どこかで私は彼の存在を拠り所にしていた。





















『……捺生さんの電話番号、メモしとけばよかったな』










講義の移動時間に目に入った公衆電話を見て思う。






そう言えば、公衆電話から慎さんに電話した事あったっけ……。





あの店にいた事が随分前の事に感じるのは、凌さんがいなくなったせいか、捺生さんと連絡がつかなくなったからか。






本当に結婚の話はなかった事にされてしまうんだろうか。










また、私は籠の中の鳥に逆戻りなのかな…。