『…七瀬?』


凌「…」


『喜ばないんですか』


凌「喜ぶ?俺が?」


『はい』


凌「…喜ぶ、べきなんでしょうね」


『え…』


凌「…」















しばらく私を抱き締めた後、体を離し最近やっと見慣れた不適な笑みを浮かべた。













凌「…あの女嫌いの藤原捺生を落とすとは菜穂様もなかなかですね」


『へ…』


凌「おめでとうございます。これで五十嵐家も更なる発展を遂げる事でしょう」


『…』












なんだ…やっぱり、か。















凌「では旦那様には私からもお伝えしておきますね」


『…まだ答え出せてないってば』


凌「断る理由ないじゃないですか?身長はそんな高く無いけど美男だし、金持ちだし。素っ気ないけど優しいと思うし」


『…』


凌「そもそも断れないでしょう?」


『…でもそしたら捺生さんが…また窮屈な家に縛られてしまう』


凌「自由を犠牲にしてもあなたが欲しいんですよ、彼は」


『…そんな価値、自分にあるとは思えないけど』


凌「捺生さん、変わっていらっしゃいますから」


『…』


凌「流れに身を任せれば良いのです。あなたにはどうする事も出来ない」


『そうかも…しれないけど』


凌「政略結婚なんてザラにある事。相手が自分を嫌っているのに婚姻、なんて事も少なくないのですよ。それを考えたら…あなたは幸せです」


『…は、い』


凌「どの道、元の道には戻れない。進むしか、無いのです」


『…』














何だか、すべての言葉がすとんと胸に落ちた。




凌さんの言葉が、全てな気がした。









.