凌「…はい?」



「聞こえなかったのか」







明らかに気分を害した様に眉を潜める旦那様に慌てて言葉を続ける。








凌「い、いえ。…けれど藤原様から会食を希望とは、随分急な話ではないかと」



「道楽息子の考えなぞ私が知るものか。ただ、藤原の力を加えればメリットがあるのは確かだ。あいつを手元に置いておく理由もない」








あいつ、とは自分の娘を指している言葉だとすぐ分かった。



…本物の菜穂でもこの人は同じ様に扱ったのだろうか。









凌「…いつ、藤原捺生は家に戻ったのです?」



「お前を呼び戻してから、…あいつが戻って来てすぐだな。理由は分からん」



凌「…あんなに家に戻る事を拒んでいたのに」



「理由なんぞどうでも良い。とにかく、縁談を円滑に進めろ」



凌「…はい」














悠さんは莉依があの店にいる事を知っていた。



それは悠さんが個人的に調べさせた事であって、旦那様は関係ない。



…旦那様は知っているのだろうか。



捺生さんと莉依があの店で接点を持ったと言う事を。











凌「…興味がない、か」










悠さんも旦那様くらい無関心でいてくれれば楽なんやけどな。








…それにしても問題は捺生さん。



縁談を拒んでいたのは捺生さんなのに、何でいきなり会食だなんて。



何を、考えている…?












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