光「そんな事、…」
…俺には出来ない。
親戚の家に預けられた俺がそこで居場所を作るには、聞き分けの良い“良い子”で居るしかなかった。
だから、他人の顔色ばかり窺うような、こんな臆病な人間になったんだ。
俺は、我が儘に生きる方法を知らない。
捺「あいつをどうするかは置いといて。…とりあえず隼人に聞きたい事聞けば」
光「…え?」
捺「お前、母親に会うた事あんねやろ?」
隼「あ、はい…っつっても一瞬、っつーか」
捺「は?」
隼「俺は、莉依に助けられてん」
光「…?」
隼「あー…っと、そのさ…俺、莉依の母親に刺され掛けて」
気まずそうな顔で隼人がそう言った。
俺が知ってるおかんは優しい花の匂いがする女性。
隼人が話をしてくれる女性が自分の母親だとはどうしても結びつかなかった。
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