『…分かりません、でも…』
一つだけ言えるのは、五十嵐の家の者が関わっているであろうと言う事。
分からないのは、慎さんがどう五十嵐と関わっているのかと言う事。
比「でも、何?」
『俺、家出…してる最中なんです。心当たりはそれくらいで』
比「お前の実家、そんな権力でもあるんか」
『まあ…それなりに大きい会社経営してるみたいです』
比「お嬢様やったんか」
『…そんなんじゃないですけど』
比「でもお前の居場所分かってんなら連れ戻しにくれば良いだけの話やろ?慎さんが関与してるのも謎やけど、それより何で慎さん挟むような面倒な事する必要があんねん」
『確かに…そうかも』
比「他に何か…理由が…」
『…慎さん、初めて会った時、俺の事知りませんでした』
比「スカウトされた時?」
『はい。…店を一つ潰すくらい、義父には簡単な事です。義父は俺を嫌っているから、周りから崩そうとしたのかも…』
比「だから慎さんにコンタクトを取ったと?」
『可能性はあると思うんです。店を潰すと脅されて…』
比「…」
『…比呂さん?』
腕を前に組んでシートにもたれかかり難しい表情を浮かべる比呂さん。
納得していないみたい、…けど本当に心当たりがない。
…店と私、そんなの天秤に架けたら店を選ぶに決まってるよ。
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