由「…ッ、血」
大丈夫って言うてんのに、ほんまに心配性やな。
変なとこ几帳面と言うか真面目言うか、スーツからハンカチを取り出して由樹が俺の手を取る。
由「何やってんねん!アホ!」
雅「ごめん。でも大した事ないし」
由「大した事なくない!」
オカンみたいやな、そんな事を思って思わず笑ってしまう。
由樹に向けていた視線を上げると、青ざめて立ち尽くす雪乃が目に映った。
…あぁ、笑ってる場合と違かった。
雅「…雪乃」
雪「ごめ…そんなつもり…雅くんを傷つけるつもりなんかなくてっ…!」
雅「ごめん」
雪「えっ…」
雅「お前が夜の仕事始めた時、俺が強く止めるべきやった。…ううん、もっと早くお前が会社辞めるって考えてる事に気づければ良かった」
雪「あ…あたしは後悔してへんよ!会社辞めてなかったら雅くんとこんな会われへんかったしっ」
雅「だから、それが」
雪「え…?」
雅「きっとほんまは後悔してんねん。俺の為、って俺はそんなの望んでない」
雪「何で…?何でそんな事言うの!?」
雅「お前に夜の仕事は似合ってないよ。俺の事も、みんな忘れて普通の仕事した方がええ」
雪「そんなの私の勝手でしょ!?」
雅「…そう、やな」
何度同じ話をしただろう。
その度に伝えることを諦めた、その結果が今や。
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