由「…それでアイツは?」
雅「篠崎さんとこ連れてった。今は隣で寝てる」
思っていたより浅かった傷痕は、それでも彼女の皮膚を断ち切り上着を紅く染めるには十分だった。
保険証を持たないという莉依ちゃんを、闇医…とでも言うんか、一度慎さんの紹介で会った事がある妙な医者 ― 篠崎さん ― の所に連れて行くと何針縫うだかの話にまでなってしまった。
由「アト、残るって?」
雅「多分…残るやろうって」
由「チッ…やっぱあいつヤブ医ちゃうの」
雅「慎さんが信頼しとる人やし、それはないて」
由「せや、お前あのヤブ医から慎さんに漏れたらどないすん?」
雅「ん…そんなん考える余裕無かった」
由「…まあそうか」
雅「まあ…知られたらその時はその時や、俺が責任取るから安心しとけ」
由「なっ…!別に俺は自分が可愛くていってる訳じゃ…っ」
雅「ああ…分かってるよ(笑)」
分かってるよ。
お前が莉依ちゃんの状況を案じている事くらい。
俺も同じ、莉依ちゃんも由樹も心証を悪くしたくない。
だから、もしもの時は俺が責任を取ろう。
雅「…一つ気になった事があんねん」
由「…何」
雅「傷見た時、チラッと見てもうたんやけど…」
由「!…まさかお前っアイツに手ぇ出したんか!?」
雅「手?…あ、ああ。お前とちゃうからそれは無い。話最後まで聞け」
由「う゛…」
雅「…背中にも傷があってん」
由「あの女…!!」
雅「ちゃうって、雪乃ちゃう。…だいぶ昔の…」
背中に走る、古い傷痕。
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