彩己は葉月の家へ向かう道を曲がらずに直進を続けた。しばらく行くと昔から二人の遊び場になっている神社がある。真夏と云えど、黄昏時の境内はひどく涼しい。木々のせいですこし薄暗いが、彩己がいれば怖くない。

「ここ来たの久しぶりね。」
「そうだね。」
「どうかしたの?急にこんなところに来て…」

何時も自信たっぷりで飄々としている彩己には珍しい表情をしている。俯き気味で目を合わせてはくれない。

「夏祭り、一緒に行こうよ。」
「え?」

この前の話の続きか。冗談だとばかり思っていたのに、何故彩己は真剣な顔をしているのだろう。

「光子と行くんぢゃないの?」
「行かないよ。一緒に行こうって云ったぢゃないか。」
「云ったけど…」
「それとももう誰かと約束したのかい?」
「してないけど…」

また妙な憶測で皆から質問攻めにされるのは懲り懲りだった。