幸せだと感じたことはなかった。今思えばなんて贅沢。平穏無事であることの有り難さに気づいていなかったなんて。葉月も彩己も。あの日に帰りたいなどと、口にすることさえ許されぬ。



全テハ大日本帝國ノ為ニ…



幸せで仕方ない日々を、二人は無碍(むげ)に過ごしてしまった。