【短】夏秘め natsu-hime


「います! 夏休みの間は毎日!」



必死に食らいつくと、彼はおかしそうに声を出して笑った。



「そっか。ほんじゃ、こんどは俺ひとりで来るわ」


「……っ」



は、はい! とあたしは裏返った声で返事して、

彼らの原付が見えなくなるまで、ずっと店の前で立ち尽くした。







「な~にが“大ファンです”よぉ。気色悪いんじゃ」



白い目であたしを見て、そう吐き捨てる陣。



「何よ、あたしが誰に憧れようと、勝手やろ」


「そやな。憧れだけやったらな」


「な、何が言いたいんよ」



陣は答えずに、アイスの棒を前歯で噛んでいる。



「もぉーっ、陣、ムカつく!」



陣の頭を平手打ちすると、「あだっ!」と声が上がった。