【短】夏秘め natsu-hime


さっき通り過ぎて行ったはずの原付が3台。


そしてその中で、ひとりだけ原付を降りて、うちの店をのぞきこんでいる男の人……。



「すんません。ちょっと道を尋ねたいんですけど」



まちがいない、

やっぱり“彼”だ……!




「幽霊が出るっていう廃墟、どの辺りですか?」


どうやら彼らは、この辺りで有名な心霊スポットを探しているらしく、



「あぁ、沖野病院跡やったら、この道を1キロくらい進んで……」


陣が面倒くさそうにアイスの棒で道を指して教えた。



「あ~、なるほど。どうもありがとう」


陣にお礼を言って、立ち去ろうとする彼に、



「まっ、待って!!」



あたしは自分史上マックスの勇気をふりしぼって叫んだ。


だって、だってこんなチャンス、きっと二度とない……!



「K高校の大倉拓さんですよね!?」