【短】夏秘め natsu-hime


「……え? なんで、陣まで?」



そしてあたしは気付いたんだ。


鼻だけじゃない。

唇も、痛いってことに。



もしかして……

今、キスしたん?



「陣……」


「あー、くそぉ! 失敗したやんけ!」



もう一回じゃ!と叫びながら、陣があたしの肩をつかむ。



「まっ、待って!」


「待たん!」


「お願いっ」


「アカン!」


「待ってってば、陣!!
待って待って、待ってーっ!!」



声を絞り出してお願いすると
やっと、陣が止まってくれた。


そして。



「……何なよ、紗里。
俺とは、嫌なんか?」



って、傷ついた顔の陣。



「嫌、ちゃうよ……ちゃうけど」


「けど、何」


「……もっと、優しくしてほしい」


「……」