【短】夏秘め natsu-hime


「………」



熱湯で茹でられたように、陣の顔が真っ赤に染まる。


そしてあたしも。

頬やら耳やら、とにかく全部が熱くなって。


声も出せないあたしたちとは裏腹に、テレビの中のマスオさんが「えぇ~!?」と変な声で驚いている。


あたしの心の中も、まさに「えぇ~!?」だった。



そのとき突然。

陣が、ガバッ!と勇ましく立ちあがった。


そして大股でズンズンズンと、あたしの方に歩いてくる。



「な、何……?」


怖いって、その顔!


「や……っ」



殴られる!と思ったあたしは、目をつむった。


だけど、予想外のことが起きた。



「……痛ったぁぁい!!」



鼻に走る激痛。

目の前に火花が散った。



「何っ、すん、の……アホ陣」



痛みのあまり、涙がポロポロ出る。

何が起きたのかわからないまま、鼻を両手でおさえ、陣をにらむと。


陣も、同じように鼻をおさえていた。