「俺、言うたよな。
“紗里が俺を一番好きって思ってくれるなら”って。

ほやから、もう紗里とは付き合えやんわ」



いつになく突き放した言い方。


これが拓ちゃんの優しさだとわかるから、あたしはさらに涙が出た。



怒られたり、責められたりするより

優しくされる方がずっと、胸が痛いね……。



「拓ちゃん、ごめんね。ホンマにごめんなさい……」



拓ちゃんは何も言わず、タバコを取り出して、くわえた。


ライターの火が潮風にあおられ、あたしの視界のはしで揺れた。



それから拓ちゃんは、2、3回煙を吐き出すと

「吸う?」

と言って、あたしの前に吸いかけのタバコを差し出した。



「……うん」



フィルターを唇にはさんで、ゆっくりと吸いこんでみる。



「……苦い……」




拓ちゃんと交わしたキスの味。



あたしには

まだ少し早かったね。