「ほい。ウーロン茶」


「ありがとう……」


「体調、どうな?」


「うん。もう大丈夫……」



あたしの隣に、50センチくらいの距離を空けて、拓ちゃんが座る。


やわらかい潮風を頬に感じながら、あたしは拓ちゃんにもらったウーロン茶を飲んだ。


冷たくて
喉がひんやりして

涙が出た。




「別れよか」



拓ちゃんが言った。



「歳をごまかしてたんは……たしかにビックリしたけど、別にええんよ。
もうすでに紗里を好きになった後やさけ、細かいことは気にしやんとく」



でも、と声を低くして、拓ちゃんは言葉を続けた。



「紗里が一番好きな男は、俺とちゃうやろ?」


「……」



あたしが一番好きな人?


そんなの、わからん。
わからん、けど。


もし陣がいなくなったら。


そう考えると、他のどんなことよりも怖くなる。