【短】夏秘め natsu-hime


「陣――……っ」



陣が、拓ちゃんの腕からあたしを引き離してくれていた。


しかもあたしの顔を自分の胸元にしっかりと押さえつけ、

鼻血が見えないようにしてくれて……。



陣のTシャツに赤いシミができていく。


それと同時に、涙のシミも。




……初めて気づいた。


チビだと思っていた陣が、知らない間にあたしと同じくらいの背になっていたことに。


陣の胸で安心したのか、何なのかよくわからないけど

あたしは涙が止まらなかったんだ。




その後……駆けつけた玉木さんが、ハンカチを貸してくれて。


人気の少ない駐車場に移動し、鼻血が止まるまで座って休んだ。


陣はいつのまにか、姿を消していた。


お礼、言うタイミング逃しちゃったな……。



「俺、飲み物買ってくるわ」



所在なさげに立ちすくんでいた拓ちゃんが、飲み物を買いに、席をはずした。