【短】夏秘め natsu-hime


「……関係ないやろ、陣には。
ちゅーかその顔、何なん?」


「それこそお前には関係ないわ」


「……っ」



だったらなんで、わざわざ来るんよ。

嫌味を言いたいだけ?



陣はおもむろにドアを閉めると、あたしの方に近づいてきた。


学校の廊下のときのように
陣を怖いと思う気持ちがまた生まれて、あたしは体を固くした。



「彼氏に会うんやったら、浴衣はやめといた方がええんちゃうか?」


「え……?」


「脱いだあと、自分で着られやんから困るやろが。
あ、そうか、祭りの日は近くのラブホで着付けサービスしてるんやっけ?」



何言ってんの、こいつ……。


怒りと、恥ずかしさと、戸惑いがごっちゃになって、頭がグラグラする。



「何なん……何なんよ、もうっ。ほっといて――」



殴ってやる。そう思って腕を振り上げた瞬間

陣に手首をつまかれた。