花火大会の日。


あたしは夕方からお母さんに頼んで、浴衣を着せてもらった。



「この浴衣、高かったんやさけ、汚したらアカンでぇ」


「わかってるよ」


「タコ焼きのソースとかよぉ」


「わかってるって」



口うるさいお母さんにうんざりしつつも

鏡に映った浴衣姿の自分は、普段より3割増しでイイ感じ。


これならきっと、拓ちゃんも褒めてくれるよね……。



「お母さん、あのね」



帯を結びながら、あーでもない、こーでもないと首をひねっているお母さんに、声をかけた。



「今日……帰り、遅くなると思う」


「あぁ、そう」



お母さんの反応は予想外にあっさりだ。


と思っていると。



「陣くんも一緒やろ?
ほんじゃ安心よ」


「……」


「はい。一丁上がり」



帯の仕上がりに満足して、ニンマリするお母さん。