【短】夏秘め natsu-hime


「たっ、拓ちゃ……っ」


「でもよぉ、勢いだけでヤルんは嫌なんよ」



焦るあたしの背中をぽんぽんと叩いて、拓ちゃんが言う。



「紗里にとっては“初めて”やん?
こんな汚い部屋で、真っ昼間からは、ちょっとなぁ」


「……」



拓ちゃん。

そんなこと、考えてくれるんや……。


どうしよう、嬉しい。



「あのっ、別に、あたしは……ええ、よ……?」


「ありがとう。ほやけど、やっぱり俺が納得いかんわ」



俺、ロマンチストやさけ。

と拓ちゃんは照れくさそうに笑って、壁にかかっているカレンダーを見た。



「紗里。あさっての花火大会、いっしょに行かんか?」



花火大会?



「うん。行きたい」



うなずいたあたしの頭を、拓ちゃんは優しくなでなでして



「……帰り、遅くなるって、お母さんに言うとき」



そう言った。