【短】夏秘め natsu-hime


「紗里。目ぇ開けすぎ」



そっと唇を離して、拓ちゃんが笑う。


だって……ビックリして閉じるヒマなかったから。



「……拓ちゃん」


「ん?」


「もっと」



拓ちゃんのタレ目が、まん丸に変わった。


そして、いつものようにフッと笑って。


また唇が重なった。



さっきより薄くなったタバコの味。


閉じたまぶたの裏が、オレンジに染まる。


太陽の色。

拓ちゃんの色。




――『どうせ彼氏にも

歳ごまかしてるんちゃうんか』




なんでこんなときに、陣の声が頭に響くんやろう。


雑念を追い出すように、ぎゅっと眉間に力をこめると


「苦しかった?」


拓ちゃんが唇を離した。



「ううん……」


「そっか。でも、この辺で止めとこら」


「……なんで?」



あたし、苦しくないよ? 

もっと拓ちゃんと近づきたいよ。

なのに、なんで?



「さすがに俺、エロモード入りそうやもん」


「……」



あたしはポカンとして、それから一気に赤面してしまった。