【短】夏秘め natsu-hime


妹さんにお化粧されている間

あたしは、拓ちゃんと友達の会話をこっそり聞いていた。



「ヤス、また彼女とケンカしたんやて?」


「あ~、あっちが一方的に怒ってるだけじゃよ。
口に出そうとしたら、キレられてもたわ」



……口に出す?

何を出すんやろう?


と、不思議に思っていると

拓ちゃんが苦笑して、友達の頭をはたいた。



「中学生の前でそんな話すんなよ」



あっ、もしかして。

前に男子たちが盛り上がってた話かな。


詳しくは知らないけど、たぶんエッチな意味やんね?



あたしは拓ちゃんにチラッと視線を送ってみる。


すると、


「こんな話、わからんでもええよ」


と言い切られてしまった。



「……」



子ども扱い。


拓ちゃんはあたしのこと、すごく大切にしてくれるけど、いつも子ども扱いなんだ。


そんなの、いらんのに。


もっと早くあたしを大人にしてほしいのに。




――『キスマークかと思ってよぉ』




あ、やだ……なんでこのタイミングで思い出すん?


また、陣に触れられた部分が熱くなる。



こんな変な感覚、早く消してよ。

拓ちゃん……。