妹さんにお化粧されている間
あたしは、拓ちゃんと友達の会話をこっそり聞いていた。
「ヤス、また彼女とケンカしたんやて?」
「あ~、あっちが一方的に怒ってるだけじゃよ。
口に出そうとしたら、キレられてもたわ」
……口に出す?
何を出すんやろう?
と、不思議に思っていると
拓ちゃんが苦笑して、友達の頭をはたいた。
「中学生の前でそんな話すんなよ」
あっ、もしかして。
前に男子たちが盛り上がってた話かな。
詳しくは知らないけど、たぶんエッチな意味やんね?
あたしは拓ちゃんにチラッと視線を送ってみる。
すると、
「こんな話、わからんでもええよ」
と言い切られてしまった。
「……」
子ども扱い。
拓ちゃんはあたしのこと、すごく大切にしてくれるけど、いつも子ども扱いなんだ。
そんなの、いらんのに。
もっと早くあたしを大人にしてほしいのに。
――『キスマークかと思ってよぉ』
あ、やだ……なんでこのタイミングで思い出すん?
また、陣に触れられた部分が熱くなる。
こんな変な感覚、早く消してよ。
拓ちゃん……。



