結局そのまま体育館には戻らず、裏門からこっそり出て拓ちゃんと会った。
「紗里ちゃん、制服似合うなぁ」
そう言って拓ちゃんは褒めてくれたけど、あたしは素直に喜べなかった。
――『どうせ彼氏にも歳ごまかしてるんちゃうんか』
陣の言葉が、
陣の指が、
追いかけてきて離れない。
目の前には大好きな拓ちゃんがいるのに……。
「ねぇ、拓ちゃんっ。
今日は拓ちゃんの地元で遊ぼよ」
これ以上この町にいたら、監視されてるみたいで頭が変になりそう。そう思った。
「俺の地元? 山ん中やから何もないでぇ」
「じゃあ拓ちゃんのおうちは?」
「でもなぁ。俺の部屋、いつもツレが溜まってるし」
「……アカンの?」
拓ちゃんは、あたしを地元の友達に会わせるのが嫌なん?
あたしがガキやから?
唇をへの字にして黙りこんでいると、拓ちゃんはポンとあたしの頭に手をのせ
「アカンわけないやん」
と言ってくれた。