【短】夏秘め natsu-hime


「冗談じゃ」



クッと喉の奥で笑ったかと思うと、陣が突然、あたしから離れて立ち上がった。



「俺もキスマークなんか見たことないわ」


「……っ!だましたん!?」


「お前が勝手に玉木の名前を出しただけやろが」



嘲笑うように言い捨て、すたすたと去っていく陣。



「陣のアホっ!」


ふたりきりの廊下に、あたしの怒鳴り声が反響する。


「陣のボケ! 嘘つきっ!!」



その言葉に反応したように、2本の足がぴたりと止まった。



「嘘つきは、お前やろ」


「えっ……」


「どうせ彼氏にも歳ごまかしてるんちゃうんか」



ふりむいた陣から注がれる、軽蔑して冷めきった視線。



「お前よぉ。いっつもみんなのこと、ガキ扱いして見下してるけど、そういうお前が一番ガキなんじゃ」