【短】夏秘め natsu-hime


キス…マーク?


そんなの付けられた覚えがない。


てゆうか、まだそんな経験すらないし。



「でも、よう見たらただの虫刺されやったわ」



ケロっと訂正する陣に、あたしは拍子抜けした。


あぁ、なんだ。
虫刺されね。

ビックリし……




「ま、本物のキスマークは、こんなんちゃうしな」




「え?」




……何? 今の言い方。


じゃあ陣は、本物を見たことあるん?

誰かにキスマークをつけたこと、あるん?




「もしかして……玉木さん?」




頭に浮かんだ言葉を、あたしはそのまま口に出していた。


しまった、と思ったけど、もう遅くて。


急に真剣になった陣の瞳が、あたしをのぞきこんでくる。



「さぁ。どうやろなあ」



陣の手が、またゆっくり伸びてきて


逃げようとしたら、背中に冷たい壁が当たった。



ふたりの距離が、詰まって。

息も詰まる。



何、この感覚。


陣が怖い。


陣が

男の人に見える。