【短】夏秘め natsu-hime


「何なん、陣!? 早く消えてよっ」


小声で陣に怒るあたしに


『紗里ちゃん?』


と心配そうな拓ちゃんの声。



『もしかして俺が迎えに来たん、迷惑やった?』


「違――!」



違う、と言おうとしたときだった。


窓際に立っていた陣が、スッとあたしの真正面にしゃがみ

いきなり、あたしの首に触れてきた。



「……っ!?!?」



ギリギリで悲鳴をこらえて、陣の手を払いのける。


だけど陣はお構いなしに、さらに手を伸ばしてきて。



「ちょっ……」


『紗里ちゃん?』


「ごっ、ごめん、拓ちゃん!
あとでかけ直していい!?」


『え? ……あぁ、もちろん』




終話ボタンを押したとたん、体から力が抜けて、ぐったりした。



「何なんよ……あんた……」



肩で息をしながら、目の前の陣をにらみつける。


ふてぶてしい態度の陣は、にらみ返すようにまっすぐあたしを見て、



「首、赤くなってたさけ。
キスマークかと思ってよぉ」


と言った。