【短】夏秘め natsu-hime


すると、陣は突然。

片方の眉をクイッと吊り上げて、意地悪に笑った。



「妊婦さんの様子、見に来ちゃろと思ってよぉ」


「は?」


「体育館でみんな噂しちゃーら。

お前が妊娠してて、つわりで吐きに行ったって」


「……」



鼻血がバレるより、もっと最悪だ。


妊娠? 

どこからそんな……



「最近お前、あの高校生と遊んでるやろ。
ヤリまくってるって町中の噂じゃ」



……ああ、これだから。

これだからド田舎は嫌。ガキは嫌。


でも、まんまとショックを受けて言い返せなくなってる自分は、もっと嫌。



「……そんな噂、くだらんわ」


「へ~、そうか」


「それに、あたしは処女じゃ!」


「へ~、そうか、そうか」


バカにしたように笑う陣。


「……っ」


ムカつきすぎて、涙すら出てくる。


いくらケンカ中とはいえ、なんで陣にまでこんな風に言われなアカンの?

幼なじみなら普通、かばってくれるんちゃうの?


拓ちゃんの何が、そんなに気にくわないって言うんよ。



もう嫌や。


拓ちゃん……。



そのとき、ポケットの中の携帯が震えた。



「拓ちゃんっ!」


『うお、速っ』



速攻で電話に出たあたしに、拓ちゃんが笑った。