やばい。これは……
鼻血が出そうな気配。
あたしは昔から、暑さにのぼせると鼻血が出やすくなる体質なんだ。
でもまさかこの歳になって、鼻から血を垂らした顔を他人に見せたくない。
「……っ」
あたしは顔の下半分を手で押さえ、体育館を飛び出した。
トイレの個室に駆け込み、上を向いてしばらく休むと、すぐに鼻血は止まった。
「はー…よかった」
……いや、よくない。最悪だ。
いきなり全校集会を抜け出して、みんなから変に思われたやろなぁ。
今からどうしようかな。
体育館に戻るのも気まずいし。
水道で顔と手を洗って、とりあえず女子トイレを出ると
誰もいないはずの廊下に、
陣がいた。
「な、何してるん、あんたっ」
まさか追いかけてきたん?
ずっとあたしのこと無視してたくせに。



