【短】夏秘め natsu-hime


「アホやな、あいつ。校門入る前にメット被ればええのに」



あたしがあきれて呟くと、玉木さんがクスッと笑った。



「でも陣くんって、なんか堂々としてて他の男子と違うわぁ」


「そう? 図太いだけやと思うけど」


「えー、そうかなぁ」



あたしたちが話している間にも、陣は自転車置き場からこっちに歩いてくる。



「おはよ、陣くん」


「おー」



チラリともあたしの方を見ずに、校舎に向かう陣。


拓ちゃんのことでケンカして以来、あたしたちは全く口をきいていない。


今までもケンカなんか腐るほどしてきたけど

こんなにしつこく無視されるのは初めてで。


ムカつくから、あたしからも話しかけてやらない。



「んじゃ、紗里ちゃん。
あたし、先に行くわぁ」


「え? うん」



玉木さんはあたしに手を振ると、小走りで陣のとなりに追いついて

そのままふたりで校舎に入って行った。



……ん? ん?

どうゆうこと?